花嫁
「わたし将来、父上のお嫁さんになるの」
「わたしも!」
双子たちがこんなことを言い出した。男なら1度は夢に見るであろう、娘たちからの可愛い求婚。まさか2人同時とは想像もしなかったけれど、これはこれで幸せに違いない。
膝の上に座ったり、背中に飛びついてきたり今日も双子たちは母によく似てお転婆だ。
「父上はどっちがいい?」
双子の妹が膝の上からそう問いかけてくると、背中で姉も「どっちどっち」と騒ぎ出す。どっち、と言われても目に入れても痛くない程に可愛い娘たちに、どっちもなにもない。
「そうですねえ。お前たちの気持ちは嬉しいが、私にはもう妻がいるし」
はしゃぐ双子を宥めながら、囲炉裏の向こう側にいる珊瑚に目をやる。まだ甘え盛りの下の息子を抱えていた。う眠たそうに目を擦る様子と見ると、どうやら息子はそろそろ寝る時間だ。
そんな優しい母の顔が、目が合った途端に娘の顔に戻るのだから、いつまで経っても珊瑚は可愛らしい。
「ねえ珊瑚、わたし若い娘2人から求婚されてるんですけど、どうしましょ」
おどけて言えば、珊瑚が笑う。
「確かに若いね。まだ5つだもの」
出会った頃はこんなに柔らかく笑う女だと思わなかった。けれど、今の珊瑚は母として女として誰より美しくて優しい。この国の全ての人間に自慢して歩きたいくらいに自慢の自慢の妻。そして、その妻との間の子供たち。こんな幸せがあるなんて、思いもしなかった。
さて、そろそろ双子たちも寝かさなくては。
「さあ、お前たちも寝ますよ。」
「どっちと結婚するのかまだ聞いてないもんっ」
「父上、どっち!」
誰に似たのかやたら強情。
双子の妹はそのまま抱き上げて、姉の手を握る。明日は姉を抱っこせねば。この順番が狂うと喧嘩が始まってしまうから。父親冥利に尽きることに違いないけれど。
「母上のように美しくなった方にしましょ」
えー、と文句を言う双子たちを布団に寝かせて、今日はどんな物語を教えてやろうか考える。昨日は犬夜叉の父上の話をしてやった。一昨日は珊瑚が大ムカデの退治方を教えていた。最初は目をキラキラさせていても、話の途中で「まだ寝ないまだ寝ない」と言いつつ眠ってしまう。
幼子の素直さが愛しい。ずっとそのままでいて。だけど早く大きくなって。
「いっぱい寝て、母上のようになるのですよ」
「はぁい」
「おやすみなさい、父上」
今日の物語は不要らしい。おやすみ。
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父な法師シリーズ。 |