| もしも
詐欺まがいのお祓いで今日も一行の宿は安泰。かごめは喜んでいたけれど珊瑚はどうも気が重たかった。あのどうしようもなく尻の軽い尼が宿が確定するや否や、すぐにフラフラといなくなってしまうからだ。
本当にどうしようもない女だと思うけれど放っておけないのは、何も今に始まったことではない。そして珊瑚のこれまでの経験上、彼女がいなくなった場合、想像できる状況は2つ。1つ目は近寄ってきた不貞な輩から金目のものを根こそぎ奪い取っている場合。1つめに関しては大目に見るとして、珊瑚にとって問題なのは2つ目だ。想像するだけで、今日も頭が痛くなる気がした。
「かごめちゃん。尼様、探してくる」
「珊瑚くんも大変ね。いってらっしゃい。」
こうして珊瑚が探しにいくと言い出すのも、かごめにしてみれば弥勒がいなくなることと並んで当たり前のこと。大きなリュックから取り出したポテトチップスの袋を開けながらのそれは、なんとも軽い返事だった。
*
弥勒が尼だと聞いたとき、珊瑚は何かの冗談だろうと思った。それこそ「法力」を見るまでは、いくら犬夜叉やかごめにいくら言われても、からかわれている気さえした。
尼だと言うくせに耳環を3つもつけて、唇に薄く紅までさしている。もし法衣でなければ完全に遊女と間違われても可笑しくないほど、弥勒は目立つ容姿をしていた。更にそこいらの女よりも断然整った顔で、本人もそれを自覚しているから手に負えない。
とにかく弥勒はそうゆう、珊瑚にとって危険極まりない女だ。
「いた」
村中を歩き回って、珊瑚はようやっと弥勒の姿を見つけた。傍らには男が一人。険悪な雰囲気ではないようで、どうやら今日は「2つ目の場合」のようだ。いっそ恐喝しててくれた方がどれだけ珊瑚の精神状態に悪影響を及ぼさないか。
だけど発見した以上、声を掛けないわけにもいかないだろう。そもそも探しに来た訳だから、こんなところで燻ってもいられない。珊瑚は改めて背筋を伸ばすと小走りで2人に近づいて、弥勒の肩に回された男の腕を掴んだ。この後の展開はもう目に見えているくらい何度も何度も経験した。
違うはいつも、男の台詞くらいなもんだ。
「なんだテメェは。この尼様に先に声かけられたのは俺だぞ!」
今日はそうくるか。この間は「お前も仲間に入りてぇのか?」だった。尼様ももう少し柄のいい男を選んでくれればいいのに、と珊瑚は深い溜息を吐く。だが、そこらの男にいくら突っかかられても珊瑚が負ける筈もない。身近な人間で対等に喧嘩できるのなんて犬夜叉か、この尼様くらいのものだろう。(犬夜叉は人間じゃないけれど)。
「生憎、尼様は俺の仲間なんで、返して頂きたい」
返す言葉は冷静なまま、珊瑚は男の腕を掴む手にぎゅっと力を込めた。
珊瑚も最初のうちはいちいち相手の挑発に乗って喧嘩をしたけれど、最近になってそんなことしなくてもいいということに気付いた。所詮、相手は素人。力の差を見せ付けられて、たかが一瞬の遊びのために戦いを挑んでくる勇者なんていない。珊瑚にしてみれば、弥勒がそういった「一瞬の遊び」として男たちの欲望に塗れた目で見られることすら、不快だけれど。
そして今日も例外ではなかったようで、男はいくつかの暴言を残してその場を走り去った。男の後姿が見えなくなって、珊瑚は大きな溜息をつく。横目で弥勒を見たけれど、やっぱり反省する様子はない。それどころか楽しんでいるかのように、今日も弥勒はにこにこ笑って珊瑚の横にぴっと寄り添った。
「尼様!反省してんの?いつもいつも」
「いいじゃないですか。そうだ、来る途中に茶屋ありましたね」
ふらふら男に付いて行くかと思えば、こうして甘えてくる。だから、いつも珊瑚はついつい弥勒を許してしまう。それでは弥勒の思うがままだと分っていても、無事な姿を見て、こうして隣を歩いていると満足していまうのだ。今日も他の男よりこちらを選んでくれた、とかそんな小さな安心かもしれないけれど、珊瑚にはそれで充分。
「ご馳走してあげますから、許してください。ね?」
「団子二皿食べていい?」
「はいはい。男子たるものたくさんお食べ。」
頭1つ分小さな弥勒のつむじを見下ろして、珊瑚は思わず微笑んだ。やっぱり3皿食べてやろ。
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誰この人たち。でも頑張ったからUPしてみました。
お嬢はすごく男らしい男になりそう。
法師はすごく小悪魔な面倒くさい女になりそう。
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